紅館再び

  98年〜99年のコンサートの時もそうだったけど、康仔はまたもやすぐに戻ってきました。でも今回はちょっと特別だったので、開催決定後から「どうなるの?」と心配になった迷もいたかと思います。それもうれしいことに取り越し苦労に終わったのですが、様子はどうだったのか?5月のコンサートにも行かれたshou_chongさんから再びレポートをいただきました。新聞拾い読みよりストレートに伝わる、またshou_chongさんの持論も交えたレポからご紹介!


shou_chongの笊日記Part2

行ってまいりました、「康定情歌演唱會Part2」。正直、行くべきかどうか迷いました。なにしろ5月に行ったばかりですし、おそらく年内に行われるであろう安仔の演唱會にも出かけるつもりの私としては、予定外の出費で懐が痛い。しかし、後々後悔するよりも、チャンスがあるときに出かけた方がよかろう、と思い切りました。実際のところ、日程発表があった段階でほぼ渡港を決めていらっしゃったと思しき美寶さんに手を引かれ、ご自身はご都合が悪くてお出かけになれないTootieさんに後押しされて決意したようなものです。お二方、煽ってくださってありがとう。

 さて今回は、美寶さんが誘ってくださったお陰で渡港三度目にしてようやく「康仔ファン同士で行く夢のツアー」がかないました。お仲間が一緒ですと期待や感動が二倍にも三倍にも大きくなって、旅がより充実したものになることを実感いたしました。と前置きはこれくらいにして、本題コンサートレポートに移りましょう。

予定時刻より30分以上遅れてコンサート開始。

 まず、前回コンサートの途中で流れた、長男ディッキー作の短編ドラマがモニターに映し出されました。次いで、例の踊る赤ちゃんの映像が。ケリーコンサートのステージをそのまま使用しているせいもあって、モニターの数、大きさともに前回より小規模で画面が見辛いのがちょっと難ですが、文句は言えません。わずか二ヶ月余りの間に三度もご本人を目の当たりにして、生の声を聴かせていただけるのですから、それだけで十分と思わなくては。

比較的シンプルな衣装。でもシャツに穴が開きまくってるのがわかりますか? 今度はどんな演出で現れるのかしらと思っていたら・・・康仔、中央のせりから椅子に座って登場。この演出は、「越唱越開心演唱會」でお馴染みですね。お友達の安仔も去年の演唱會のオープニングで椅子に座ってました。二人とも椅子好きなんでしょうか? ただ、この椅子が演唱會らしい華やかなものではなく、木づくりのデッキチェアだったのです。ここで、まず「おや?」と思いました。そして康仔の衣装を見て今回の演唱會のテーマを理解しました。シンプル&カジュアルなんだと。ステージ衣装らしい派手なものはいっさいなし。おそらく衣装さんのお手を煩わせたものは一着もなく、自宅のクローゼットから持参したものばかりではないか、と思われる限りなく私服に近いものでした。それも時として仰天するような普段着をお召しになる康仔にしては、いたって落ち着いた地味なトーンのものばかり。香港明星にありがちな、本人大得意、実は大はずし、で大笑いの対象になるようなお衣装も密かに期待するようになっていたファン(私)にとっては、拍子抜けするくらいの飾り気の無さです。康仔、日本人ファンの屈折した楽しみを察知して、そうはさせじと無難なものでまとめたのでしょうか? とは言うものの、生写真でよーく見ると、やっぱり康仔のファッションセンスは健在でした。細部が凝ったつくりでこだわりを感じさせるものばかり。いくらシンプルにと言っても、ただのTシャツとジーンズやコットンパンツの組み合わせでは康仔のおしゃれ心が許さなかったんですねえ。(このあたりはきっとお写真をUPしていただけるでしょうから、みなさまとくとご覧ください。)しかし、一点、一点は奇抜なデザインでもトータルでは破綻なくまとまっているところはさすがと言うべきなのでしょう、たぶん。

 衣装の話が長すぎましたか? 実のところ今回は前回のように凝った演出もなく、淡々としたひたすら歌だけを聴かせるのが特徴のようなコンサートでしたので、流れを追ってレポートするのが難しいのですよ。などと泣き言を言っていても仕方ないので、目に付いたところだけでもピックアップしてみましょう。

 今回のゲストは、エドモンド、ケリー、アラン・タム校長でした。ゲストその1、ケリーちゃん。

 エドモンドは今回もキーボードで活躍。でも前回に比べると滞在時間は短め。康仔のおしゃべりも、詩のパロディもなし。弾き語りだけのあっさりした演出でした。エドモンドのソロパートのとき、康仔は銀色のスツールに腰をかけマイクを下に持って一緒に口ずさんでいました。何気ない風景ですが、様になっていてかっこよかったです。そしてほのぼのと暖かい気持ちにさせられました。

 ケリーは例の「有人喜歡藍」ビデオの最後、前回安仔やニコが現れた場面で登場しました。(ただし、今回は少しビデオを手直しして登場人物も若干変わっていたようです。でも、私の席からはよく確認できませんでした。と言うのも、前に座られた方が、いささか横に大きなおばさまだったので、モニターがよく見えなかったのです。スリムなエドモンドなどはおばさまの影にすっかりかくれてしまって、隙間から覗くしかなかったのでした。かなしー。)バトンをくるくる操るケリーの姿が映り、そのままステージへという流れです。ケリーは自分のコンサートでバトンの妙技を披露したようですね。ゲストその2、アラン校長

 校長は張崇基、張崇徳兄弟の演唱會にゲスト出演した後そのままの服装で駆けつけてくださったそうです。ステージに登場した瞬間、一際大きな歓声があがり、校長の威力はたいしたものなのだなあと思い知らされました。私は生でご尊顔を拝するのは今回が初めてでしたが、やはりパワーありますねえ、校長。会場を盛り上げる力はさすがでございました。中華明星に関しては気の多い私は嫌いな方はあまりいないのですが、正直に告白いたしますと、校長は数少ない苦手な方のお一人でございまして、(校長ファンのジマイマさん、ごめんなさい)自らコンサートに出向くことはないでしょう、というお方なのです。その私ですら、あのエネルギーにはただただ圧倒されるばかりでございました。康仔も校長に刺激されたのか、とても楽しそうに派手に踊っていました。大親友の安仔やイーソンが用事(北京の賞に参加と後に知りました)があって来られなかっただけに、校長が掛け持ちで駆けつけてくださったことは、康仔もすごく嬉しく感謝していたに相違ありません。校長に背中からでも伝わる二人のこの力強さ!深々と頭を下げていましたし(90度のおじぎ)、そんな高揚した気分のせいでよけいに派手に踊っていたのかもしれません。ステージ両端のお立ち台(?)で二人がそれぞれ歌う様は実に圧巻でした。惜しむらくは、私たちの席が校長の方に近い場所にあったことです。康仔の近くなら言うことなしでしたのに。(校長、ごめんなさい。)

 シンプルな構成の中で唯一派手だったのは、外国人ダンサー六、七人を交えた「眉来眼去」でした。白、黒のキューブを組み合わせたようなソファー(キャスターつき)を真ん中にしてダンサーがセクシーに踊ります。アメリカ映画のバーのシーンなどでよく見かける露出度満点のみなさまです。(「踊り子さんには手を触れないでください」系のダンサーと申しましょうか。)しかし、前回のフローラ姐さんとのダンスのようにきっちり振り付けが決まっていたとは思えませんでした。全体の流れについては指示があったのでしょうが、各自の細かい振りまでは詰めていなかったのではなかろうか、という印象です。康仔がソファーに乗る場面は決められた動きのようでしたが、ソファーから少し離れた場所で歌っているときは、「君たち、テキトーに扇情的にクネクネしててくれたまえ」と言われたのではないかなんて思っちゃいました。さて、このシーンで少しハラハラする出来事がございました。康仔、ソファーの座面で歌っているときはよかったのですが、背もたれの上に腰をおろしたとき、ソファーがフワッと後ろに傾きかけたのです。ダンサーさんたちがあわてて押さえてくれたのでなんとか難を逃れましたが、康仔、内心ひやっとしたのではないでしょうか。たぶん、調子に乗って上に行きすぎたのでしょうね。ここでスッテンなんて後ろにひっくり返ったら、新聞の恰好のネタになるところでした。東スポ流に書くなら、「康仔コンサート(で)コケル」(で、は思い切り小さな字)なんて見出しがついて、デカデカと報道されるに違いありません。いやー、ほんと危ないところでした。

 全体を通して感じたのは、康仔がいつも以上に一曲、一曲を丁寧に心をこめて歌っていたことです。私が特に心に残ったのはまず「我發誓以後」。この曲、最近の曲の中で一番好きなんです。前回は完全握手タイムにされていてみんなで残念がったものでした。今回は歌が中断されることはなかったので、まあよしとしましょう。でも本音を言えば、ステージ中央にとどまって、伴奏はピアノだけで聴かせてもらいたかったなあ。それから「幸福離我們很近」の歌詞違い、「情非得己」。おそらくコンサートでしか聴けない選曲でしょう。CDよりも、また前回よりも軽快に歌っていたかな、と感じました。そして、「昨遅人」。前回、初日は安仔と二日目は独りで歌っていましたね。「初日は安仔への遠慮があったけど、二日目は思い切って歌っていた」とHO太さんはおっしゃっていました。さらに今回はすっかり自分の歌として歌いこなしている、というのが私の印象です。

 今回は事件からちょうど七週間の土曜日、台湾行きを目前に控えたコンサートでした。康仔自身は事件のことは具体的な言葉で語ってはいなかったようですが、ステージの構成、衣装などに事件の影響があったことは否定できないでしょう。シンプルに徹したのはそれなりの理由があるのではないか。おそらく消極的理由(マイナスに作用しそうな要素は一切排除して、マスコミにたたかれないように用心した)と積極的理由(康仔自身に今回は歌に専念したいという希望があった)両方の理由があるのではないかと思っています。感極まりそうな康仔

 写真を見比べてみても、前回は屈託のない笑顔が多いのに、今回は真剣な表情、切ない表情、ほっとした表情、感極まって泣きそうになるのをぐっとこらえている表情、などが目立ちます。衣装はカジュアルでリラックスできるものばかりでしたが、内面は前回の何倍も緊張していたのでしょう。コンサートが成功するかどうかの心配も含めて、本人にしかわからないさまざまな思いが交錯していたのではないかとお察しします。そのストレスたるや大変なものだったでしょうね。家族、友人、ファンが励ましてくれても、逆境を乗りこえるのは本人ですから、孤独にならざるえない局面もあったでしょう。いわば試練のときに行われたコンサートですから、康仔の意気込みもこれまでとは違うものだったはずです。そのことは渡港前からある程度わかっていたつもりでした。しかし、実際にコンサートを体験してみて、自分の予想は甘かったなあ、と反省しています。康仔が受けた苦しみは並大抵のものではなかった、それを思い知らされました。こんな時期に逃げずにコンサートを開いてくれた康仔は本当に偉い! 一ファンとして、ひたすら感謝するのみです。

 これほどすばらしいコンサートでしたが、唯一気になる点がございました。それは握手、ハグ、花束で曲の流れを途切れさせてしまう人が目立ったことです。康仔がステージの端に沿って歩きだすと、民族大移動が始まり、おとなしく聴いている我々は落ち着かないことこの上なしです。一体全体コンサートに何しにきたのでしょう? 康仔のファンはもっと自覚のある大人のはずです。前回からこの憂うべき傾向は目についていたのですが、いよいよそれが定着しつつあるようで不安を感じております。康仔にしてもこれが望ましい状況だとは思っていないようで、握手をしながらステージを一周するのかと思いきや、半周目あたりで立ち止まり、角に座り込んで歌うという場面も見られました。しかし、心優しい康仔が、花束やぬいぐるみなどのプレゼントまでは拒絶はできないでしょうから、やはりファンの方から節度ある行動をとるように心がけてほしいものです。前回、康仔は彼にしては珍しく、娯楽性に富んだ、いわば香港らしいコンサートを提供してくれました。おそらくそのねらいは香港人の音楽的嗜好の幅を広げることにあったのでしょうが、握手を求める人が増えるであろうことはある程度予想していたかもしれません。とは言え、今回も、まさかここまで曲の最中にファンに囲まれるとはと、康仔自身驚いているのではないでしょうか。康仔の理想とファンの欲望がずれている悲劇と申しましょうか。なーんて、偉そうなことを書いている私にしたって、康仔に握手してもらえたら「うれしー!」と舞い上がっちゃう単純なファンなんです。でも、一応は康仔の音楽性、人間性にも敬意を抱いておりますから、曲の最中に席を立って康仔や他のファンのみなさんに迷惑をかけることだけはしたくないのです。康仔をどんなに好きであっても、と言うより好きだからこそ、それはできない。人間ときにはやせ我慢も必要ではないか、なんて思っています。この気持ちが香港の「一部の」ファンの方々に伝わればいいのですが。

 あれこれと駄文を連ねてまいりましたが、なんだかんだ言っても、康仔のコンサートは前回にしろ今回にしろすばらしいものでした。ですから、次回こそはぜひとも日本から行きやすい日程を早めに発表していただきたい。そして、一人でも多くの康仔迷と一緒にコンサートを楽しみたい。さらには盛大な香港オフをしたい、と切に願っております。


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